㈱REVOLUTION:幻の株主優待制度

事例

東証スタンダードに上場する株式会社REVOLUTION(証券コード:8894)は2024年10月23日に、一定の要件を満たした株主に年間12万円のQUOカードPayを付与する株主優待制度を公表しました(当時の代表取締役社長であるa氏が考案)。

しかし、翌年の3月11日に株主優待制度を廃止すると発表しました。1度も株主優待制度を実施することができずに、幻の制度となりました。

株主優待制度が廃止された理由を、2025年7月14日に公表された株式会社REVOLUTION第三者委員会『調査報告書』からまとめます。

まとめ

  • 高額株主優待の公表と廃止:2024年10月に年12万円のQUOカードPayを付与する株主優待を公表したが、財源不足により一度も実施されないまま2025年3月に廃止された。
  • 社長個人の強い株価インセンティブ:a前社長は株価1,000円達成で巨額利益、150円割れで多額損失となる新株予約権を取得しており、株価上昇を最優先する立場にあった。
  • WeCapital社の子会社化と大量のREV社株式交付:株式交換により、WeCapital社経営陣に約3.4億株のREV株式が交付され、うち約半分は売却可能な状態だった。
  • 大量売却による株主優待対象者の急増:WeCapital社経営陣による売却で市場流通株が増加し、株主優待対象者が想定を大幅に超え、優待制度に必要な財源が膨張した。
  • 財源枯渇と経営破綻的判断:2025年1月末時点の預貯金は約2.8億円にとどまり、株主優待の実施は現実的に不可能となった。
  • 優待廃止・社長辞任・訴訟へ:株主優待は正式に廃止され、a前社長は辞任・新株予約権放棄に至り、REV社は経営責任を問う訴訟を提起した。

REV社の沿革

株式会社REVOLUTION(以下REV社)の前身は、1986年3月に設立された原弘産です。

株式会社原弘産は、2001年9月に大阪証券取引所第2部へ上場を果たします。

2019年5月、㈱原弘産は有限責任会社EVO Fundの子会社となり、同年11月に株式会社REVOLUTIONに商号を変更します。

2022年4月には、東証スタンダード市場へと市場変更となりました。

その後、不動産事業を展開するFO1社が、REV社株式の公開買付けを開始し、2023年10月2日にREV社株式の65%(4億2,000万株)を取得して同社の筆頭株主となります。

これに伴い、REV社は、2023年12月、本社を東京へ移転し事業の中心を首都圏における不動産の買取・再販事業へと移行させました。 また、REV社の役員7名を総入れ替えし、新たに役員5名を選任します。

新役員5名のうち、代表取締役社長であるa氏が、『調査報告書で取り上げられる中心新人物です。

FO1社の代表社員であるb氏がa氏をREV社の代表取締役への就任を打診しました。

発端:2度の株主優待制度公表とa社長への新株予約権交付

2024年10月23日に一定の期間2,000株以上保有している株主を対象に年12万円のQUOカードPayを付与する株主優待制度を公表しました。

本株主優待制度の狙いは株価の上昇です。

a社長の見積もりでは、①株主1名当たりの利回りは15.3%、②対象となる総株主数は1,141名、③総費用は1億3,692万円となり、REV社の財源に照らして実現可能と判断しました。

優待制度を公表したのち、a社長はこれまでのREV社の代表取締役としての自身の実績を鑑み、自身の会社に対する成果を享受したいと考え、2024年12月9日に新株予約権の交付を受けます行使条件の1つに、交付後から翌年末までに株価の終値1,000円以上を達成するがあります。

一方、交付後から翌年末までに株価の終値が150円を下回った場合強制執行されるという条項も含まれております。

新株予約権の総数が33,644個、新株予約券1個につき583円であり、a社長はREV社から資金を借り入れて総額約1,960万円を同社に払い込みました。

新株予約権1個につき普通株式100株が付与されます。新株予約権の行使価格は1株506円です。

例えば、行使条件を満たして1株1,000円の時点で権利行使を行うと、1株1,000円の株式を506円で購入できます。つまり株価の差額の494円×(新株予約権33,644個×新株予約権1個につき100株)の約16.6億円を得ることができます。新株予約権を1,960万円で購入しているので、a社長は差し引き約16.4億円の利益を得ます

もし強制執行条項に該当し株価が150円を下回った場合、a社長は1株当たり506円を支払って150円以下の株式を買わなければなりません。株価の差額の-356円×(新株予約権33,644個×100株)の約11.9億円を失います

つまり、a社長は、新株予約権の付与によって是が非でも株価を上昇させなければなりません株価が行使条件を達成できれば自身にも莫大な富がもたらされますが、もし強制執行条項に抵触するほど株価が下落すれば、自身が多額の損失を受けることになるためです。

a社長が新株予約権の交付を受けてからのREV社の株価推移は芳しくありませんでした。

REV社は、2024年12月13日、当初は同日に行うことを予定していた2025年10月期の決算発表を、同月20日へと延期する旨を公表し、株価が下落しました。20日に決算を公表し、翌期の最終損益が10億円の赤字に陥る予想が開示したところ、さらに株価が下落しました(終値590円)。

a社長は、これ以上のREV社の株価の下落を防ぎ、株価上昇を図るために、株主優待制度の特例措置を検討します。これにより、2025年1月31日時点及び同年4月30日時点の株主名簿に2,000株以上の保有株主として記載又は記録されている者は、新たに本株主優待の対象になることが決議されました。

2024年12月24日に株主優待の特例措置のお知らせを開示しました(終値410円)。

ここまでの記述は以下の3点にまとめられます。

  • a社長は株価上昇を目的に、1度目の株主優待制度を公表する(2024年10月23日)。
  • a社長は自身の仕事に対する成果を享受するために、新株予約権の交付を受ける。この新株予約権は達成条件を満たすとa社長に10億円以上の富をもたらすが、強制執行条項に抵触するとa社長は10億円以上の損失を受ける。
  • a社長は、さらなる株価上昇を目的に、2度目の株主優待制度(特例措置)を公表する(2024年12月24日)。

優待制度破綻の引き金:WeCapital株主兼経営陣へREV社株式の交付

株主優待制度の対象株主がa社長の想定以上に増加した原因を確認するために、時間をすこし遡ります

a社長は、2024年6月以降、WeCapital株式会社(以下WeCapital社)の代表取締役であるp氏との間で、資本提携及びM&Aの協議を開始し、その結果REV社がWeCapital社の株式の51%以上を保有し、WeCapital社を連結子会社とするM&Aを行うことが合意されます。

子会社化する方法は、REV社の株式をWeCapital社の株主に割り当てる株式交換です(REV社はWeCapital社の株式を受け取り、WeCapital社の株主兼経営陣はREV社の株式を受け取ります)。

なお、a社長はWeCapital社の株主ではなくなる同社の経営陣に対して、REV社株式の売却を一定期間制限するロックアップ条項等を規定することを提案し、p氏はこれを了承しました。

2024年8月30日、株式交付比率を1:12,429とする(WeCapital社株式1株当たりREV社株式12,429株を割り当てる)内容の同日付け『株式交付計画書』を作成しました。

同年9月27日、REV社及びWeCapital社の株主兼経営陣との間で、ロックアップ条項等を含む株式譲渡契約が締結されます。

なお、上記の株式譲渡契約には、ロックアップ条項の対象となっていない50%相当分のREV社株式を第三者に譲渡することを禁止又は制限する規定は定められておりません。

2024 年10月11日、本株式交付の効力が発生し、REV社は、WeCapital社の株主から同社株式合計27,483株(WeCapital社発行済株式総数の54.66%)を取得し、WeCapital社の株主兼経営陣は、対価としてREV社株式合計341,586,207株の交付を受けます。これにより、WeCapital社はREV社連結子会社となり、WeCapital社の株主兼経営陣は、WeCapital社の経営陣となりました。

ここまでをまとめると以下のようになります。

  • WeCapitalの経営陣がREV社株式約3.4億株を交付された。
  • 交付されたREV社株式の50%はロックアップ条項により一定期間売却できないが、残りの50%は売却が可能である。

優待制度破綻の原因:WeCapital経営陣によるREV株式の大量売却

WeCapital経営陣のp氏は、株主優待の特例措置の導入に先立ち、a社長とb氏(REV社の大株主であるFO1の代表社員)に対し、自身の保有するREV社株式のうち、本ロックアップ対象外株式を売却したいと考えている旨を伝えます

背景には、WeCapital社の経営状況が芳しくないことや当該時点でWeCapital社経営陣とb氏との関係性が悪化してきていることがありました。

株式交換によりWeCapital社経営陣はREV社株式を合計3.4億株を取得しておりますが、ロックアップ条項の適用を受けていない株式が50%あります。REV社株式が大量に売却されると、株価が下落することに加えて、株主優待制度の適用を受けられる株主が増加します

2024年12月24日に本株主優待の特例措置が公表されて以降、WeCapital社経営陣の一部が保有するREV社株式が順次売却されます。その結果、特例措置によって拡大した株主優待の対象株主を決定する基準日であった2025年1月31日時点で、約711万株が市場に流通することとなりました。

株式売却の影響もあり、株主優待の初回の対象株主数の最大値は9,930名本株主優待の実施に必要な財源は約11.9億円となります。

2025年1月末時点でのREV社の預貯金残高は約2億8,000万円しかない状況であったため、追加で財源を確保しなければ本株主優待の実施が不可能である状況に陥りました。

破綻:株主優待制度の廃止とa社長の辞任

2025年1月15日、a社長とb氏とで話し合いの機会がもたれ、b氏からa社長へ、REV社の経営を任せられないこと、及び代表取締役を辞任するべきと考えていることが伝えられます。

このような状況の中、a社長は、2025年2月10日、REV社内の自身の執務室の荷物を全て引き払うとともに、REV社オフィスへの出社を拒否するに至ります。

a社長の出社拒否のあった翌日の2025年2月11日頃、a社長とb氏らが参加する会議が行われ、本株主優待の財源確保は現実的でなく、本株主優待は廃止することが確認されます。併せて、b氏が、a社長に対し、代表者を辞任すること、及び残務整理を行い必要な引継ぎを行うことを指示します。

その結果、a氏が2025年2月19日以降の時点でREV社の代表取締役を辞任するとの方針が固まります。

最終的に、3月11日16時30分にREV社は、株主優待の廃止、a社長が新株予約権を放棄する旨及びa社長の代表取締役社長辞任に関する適時開示をそれぞれ実施しました(終値195円)。

a社長の言葉を信じて2000株以上保有した株主は優待制度を1度も受けることができませんでした。さらに、優待制度の特例を公表した前年12月24日の株価410円から優待制度を廃止した3月11日の株価は195円まで下落しております。

以下一連の出来事とREV社の株価推移をまとめた資料を示します。

出典:第三者委員会『調査報告書』別紙3。

株価はWeCapitalの子会社化の計画を公表してから上昇を続け、a社長に対する新株予約権の件を公表したタイミングで651円にまで上昇します。その後、決算発表の延期や、決算の結果を受け株価が下落しました。

株主優待制度の特例措置を公表した2024年12月24日には410円まで上昇しますが、以降は下落の一途をたどります。

2025年12月12日の株価終値は54円です。

REV社のa前社長に対する訴訟の提起

a前社長に付与された新株予約権には、株価終値150円を下回った場合に強制執行を行う旨の条項が付されておりました。そして、株主優待制度廃止を公表した翌日3月12日の株価終値は145円です。株価終値150円を下回ったため、強制執行条項に抵触し、a前社長は1株506円でREV社の株式を購入する義務が生じます

a前社長は2025年3月11日に新株予約権放棄したので、強制執行条項には抵触せず、新株予約権を行使する義務を負わないと主張しております。

この主張に対して、REV社は2025年9月に公表した「当社前代表取締役への訴訟の提起に関するお知らせ」の中で訴訟に至った理由を詳細に述べております。

最終的に、以下のような文言で訴訟理由をまとめております。

 第三者委員会の調査目的であった株主優待制度及び第9回新株予約権の関連について〇〇氏に大きな責任があることは明らかです。
 調査報告書が提出された以降も、〇〇氏が自身の経営責任を一切とらず、当社の株主様、当社のステークホルダー及ぶ当社グループ等に対して一切誠意のない対応を継続しているため、この度、当社は〇〇氏の経営責任の追及と再発防止を目的として本件訴訟の提起に至りました。

「当社前代表取締役への訴訟の提起に関するお知らせ」p3(〇〇氏の原文は実名)

参考文献

株式会社REVOLUTION 第三者委員会『調査報告書』

REVOLUTION[8894]:第三者委員会の調査報告書受領に関するお知らせ 2025年7月14日(適時開示) :日経会社情報DIGITAL:日本経済新聞
2025年7月14日 REVOLUTIONの開示資料「第三者委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」 が閲覧できます。資料はPDFでダウンロードできます

株式会社REVOLUTION 「当社前代表取締役への訴訟の提起に関するお知らせ」

https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20250925/20250925562204.pdf

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