日商簿記検定試験3級は、あらゆる会計関連の知識をつけるための土台になります。土台がしっかりしていないと、知識を積み上げにくくなってしまいます。簿記会計の分野でステップアップしていくにあたって、日商簿記検定試験3級(以下簿記3級)が重要になる理由をまとめます。
結論
- 上級レベルの資格試験ほど、他の受験生の獲得点数に応じて合格得点が決まる相対評価になります。合格得点は平均より若干高く設定されます。したがって、合格のためには他の受験生が解けるような基礎的な問題を必ず正解する必要があります。難問や奇問は合否に影響を及ぼしません。上級レベルに合格する多くの受験生は難問を解ける力があるのではなく、基礎的な問題を確実に正答する力があるのです。したがって、基礎的な問題から構成される簿記3級を完璧に身につける必要があります。
- 簿記は知識の積み上げで成り立っています。簿記3級では、仕訳、元帳への転記、試算表の作成、決算整理仕訳、帳簿の締切り、精算表や財務諸表作成といった簿記一巡の手続きを学びます。この手続きは上級レベルを学ぶ際の前提となります。基礎と上級の違いは、取引の種類が増えることです。土台となる知識は簿記3級で扱っているのです。
日商簿記検定試験3級の合格水準
簿記3級は100点中70点以上を取得すれば合格できます。資格を取ること自体が目的であれば、7割以上の得点を目標にすればよいです。
合格率も30%~40%と比較的高いです。合格だけを目指すのであれば、そこまで大変な資格試験ではないでしょう。
しかし、簿記3級を足掛かりとして今後さらに簿記会計を学ぶためのステップアップを目的に取得するのであれば、100点を取らなければなりません。それも100回過去問題を解いたら、すべて100点を取れるような精度で知識をつける必要があります。
簿記3級が重要となる理由は、上級レベルの資格資格の性質という面と、知識の積み上げという2つの面があります。
上級レベルの資格試験の性質:相対評価
上級レベルの資格試験とは日商簿記1級、税理士試験、公認会計試験などを指しています。
簿記3級は絶対評価です。70点以上が合格となります。そして問題ごとに点数が明示されています。したがって他の受験生のレベルと自分が試験に合格できるかは関係ありません。
上級レベルの資格は相対評価です。相対評価では、他の受験者の点数を踏まえて合格水準が決まります。
例えば日商簿記1級は70点以上が合格となることは明示されていますが、どの問題に正解すると何点獲得できるのかは示されておりません。1級試験は大問が商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算という4つが出題され25点づつ点数が割り振られていますが、例えば会計学の問1の得点は不明です。
日商簿記1級では、配点に傾斜がかかるといわれております。難しい問題は多くの受験生が解けないので点数配分が低くなります。簡単な問題と少し難しい問題に点数が配分されるのです。
公認会計士試験の1次試験である短答式はマークシート方式で解答します。問題ごとに得点が明示されています。しかし、合格水準の得点は各受験生の得点によって毎回変動します。簡単な傾向の問題であれば合格水準の得点は高くなりますし、難問が多ければ合格水準の得点は低くなります。
税理士試験についても各問何点かが明示されておりません。
相対評価の試験に合格するために必要なことは、難しい問題を解けるように勉強をすることではありません。
相対評価の試験に合格するために必要なことは、多くの受験者が解ける問題を絶対に間違えないように基礎を徹底的に勉強することです。
相対評価の試験は平均点よりも少し高い点数を合格ラインに設定されます。平均点(厳密には中央値)は多くの受験生が獲得する点数であり,合格ラインぎりぎりに多くの受験生が集まっています。そこでは1問のケアレスミスが命取りになります。
受験本番は緊張しますし、解答時間も限られますし、また長丁場戦いですので、どうしてもミスが出やすいです。ミスを出しにくくするために基礎的な知識を確実にする過程が生きてきます。いかにミスを減らせるかが合否に直結します。
知識の積み上げ
もう一点が知識の積み上げという面です。
簿記3級は、簿記一巡の手続きを通じて財務諸表を作成するまでが問われます。簿記3級で出題される取引は、比較的簡単なものが多いです。
発展的な知識とは取引の種類が増えることをいいます。例えば固定資産を購入せずに、他社からリースをした場合や割賦で販売する場合や満期保有目的で債券を購入する場合などです。会社が行うビジネスに応じて様々な取引形態が生じますので、色々な取引に対応できるように知識を身につけています。
それぞれの取引は少々手間のかかる処理が求められますが、すべて簿記一巡の手続きの枠内で処理がされます。したがって土台となる知識は簿記3級で扱っているのです。
日商簿記3級は単なる通過点ではありません。
「確実な100点」を目指して簿記3級を学ぶことが、今後の学習や資格取得において大きな差となって表れます。
コメント