アサヒグループHD㈱:海外企業買収による成長

事例

アサヒグループホールディングス株式会社(以下アサヒグループHD)は海外酒類事業の買収を中心に拡大を続けてきました。同社の連結財務諸表の変化をまとめます。

結論

アサヒグループHDは海外のビール事業の買収を行うことで成長を続けています。

買収を続けた結果、多額ののれんが計上されています。

海外ビール事業が買収時の期待通りの収益獲得が見込めない場合、のれんが減損され、多額の損失が発生するリスクを抱えています。

アサヒグループHDの歴史

アサヒグループHDの前身は1889年に設立した大阪麦酒株式会社にまでさかのぼります。

1906年3月に大阪麦酒株式会社、日本麦酒株式会社、及び札幌麦酒株式会社の3社合同により大日本麦酒株式会社となります。

戦後、大日本麦酒株式会社が過度経済力集中排除法の適用を受け、2社に分割されたことに伴い、1949年9月に朝日麦酒株式会社が発足されました。主要ブランドとしてアサヒビール、三ツ矢サイダーを継承しております。

なお、分割されたもう1社が現在のサッポロホールディングス株式会社のルーツにあたる日本麦酒株式会社です。日本麦酒株式会社については下記の記事でまとめております。

サッポロHD㈱の収益構造:ビール会社の稼ぎ頭は不動産
サッポロホールディングス株式会社(以下サッポロHD)は、サッポロビールやエビスビールを製造・販売するサッポロビール株式会社や、清涼飲料水や食料品を扱うのポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社を主とした企業グループなどを傘下に持つ純粋持株...

朝日麦酒株式会社は1989年1月にアサヒビール株式会社に商号変更しております。

その後、2011年7月にて純粋持株会社制に移行し、アサヒビール株式会社からアサヒグループホールディングス株式会社に商号変更しております。

業績の推移

同社の2007年度から2011年度の業績の推移を確認します。金額の単位は百万円です。

売上高総資産のれん
2007年度1,464,0711,324,39165,325
2008年度1,462,7471,299,05860,675
2009年度1,472,4681,433,652100,314
2010年度1,489,4601,405,35884,172
2011年度1,462,7361,529,907184,407

2007年度から2011年度の5年間は売上高が約1.4兆円で横ばいの推移であり大幅な成長は確認できません。なお、2011年に英・ギャドバリーグループの所有するオーストラリアの飲料事業(SCHWEPPES HOLDINGS PTY LTD)他2社を買収したことでのれんが100,000百万円ほど増加しています。この買収をもって、オセアニア地域に事業を拡大しています。

売上高総資産のれん
2012年度1,579,0761,732,187203,764
2013年度1,714,2371,791,555196,203
2014年度1,785,4781,936,609195,859
2015年度1,689,5271,804,673223,485
2016年度1,706,9012,086,381491,538

2012年度になると売上高が前年度比で116,340百万円(約1,160億円)増加の約1.57兆円です。その後増加も増収傾向で2016年度には約1.7兆円の売上高を誇るようになりました。

2016年にSABMiller plcのイタリア、オランダ、英国事業その他関連資産の取得を行っております。買収を通じて欧州地域に事業を拡大しています。

売上高総資産のれん
2017年度2,084,8773,346,8221,538,679
2018年度2,120,2913,079,3151,428,543
2019年度2,089,0483,140,7881,398,422
2020年度2,027,7624,439,3782,701,985
2021年度2,236,0764,547,7482,819,634

2017年度は前年度比で売上高が3,770億円増加し、総資産1.2兆円、のれん1兆円が増加しています。SABMiller plcの中東欧事業の買収を通じて欧州地域内のポーランド・チェコ・スロバキア・ルーマニア・ハンガリーに事業を拡大しています。

2020年度には世界最大のビール会社であるアンハイザー・ブッシュ・インベブのオーストラリア事業であるABI Australia Holding Pty Ltdを買収しました。前年比で総資産が約1.3兆円、のれんが約1.3兆円増加しました。

売上高総資産のれん
2022年度2,511,1084,830,3443,027,929
2023年度2,769,0915,285,9133,283,948
2024年度2,939,4225,403,4053,353,896

最新の2024年度は売上高は2.93兆円、総資産5.4兆円です。

2007年度2024年度を比較すると、売上高が1.5兆円、総資産が3.9兆円、のれんが3.3兆円増加しています増加の原因は海外酒類事業の買収を立て続けに行ってきたためです。

アサヒグループHDのセグメント別業績

2024年度のセグメント業績を確認します。金額の単位は百万円です。

日本欧州オセアニア東南アジア
売上収益1,362,874781,005715,39466,138
利益136,27265,82281,8441,783
資産1,058,5482,067,2032,101,19653,853
売上利益率10.0%8.4%11.4%2.7%

日本の売上収益を欧州・オセアニア・東南アジアの合計が上回っています。

国内市場は人口減少やビール需要の減少などで頭打ちの傾向があり、海外に成長の活路を見出してきたことが示唆されます。

東南アジアの売上利益率が低いことが気になりますが、それ以外のセグメントは比較的高いことがみてとれます。

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