株式会社ポケモンの業績が好調です。同社の決算公告が2025年6月2日、官報にて掲載されました。同社がどのような事業を行っており、なぜ業績が好調なのかに迫ります。
結論
- 株式会社ポケモンは、ポケモンコンテンツのプロデュースに特化し、多様な事業を展開しています。
- 決算公告によると、5期連続で増収増益を達成しており、利益率も15%以上と高水準を維持しています。
- 2024年10月にリリースされた『Pokémon Trading Card Game Pocket』(ポケポケ)のヒットが業績に大きく寄与しています。
- 版権管理を現著作者側で一元化したことで、利益の適切な分配とブランド価値の維持が実現されています。
株式会社ポケモンの沿革
ポケモンセンター株式会社(2000年10月に株式会社ポケモンに商号変更)は1998年4月に、任天堂株式会社、株式会社クリーチャーズ、株式会社ゲームフリークの共同出資により設立されました。
株式会社ポケモンは、ポケモンというコンテンツに特化し永続的なブランドに育てるために、原著作権者によって設立された企業です。
持株比率は、任天堂株式会社が32%であり、残りを株主会社クリーチャーズと株式会社ゲームフリークが保有します。
株式会社ポケモンの事業
株式会社ポケモンの事業を一言でいうと、ポケモンをプロデュースすることです。
株式会社ポケモンの事業(プロデュースを行う領域)は、「ゲーム」、「カードゲーム」、「アプリ」、「映像」、「店舗運営」、「ライセンス/タイアップ」など多岐にわたります。
「ゲーム」はゲームメーカーである株式会社ゲームフリークや株式会社クリーチャーズなどと協力して、ゲームの企画・開発に携わります。
「カードゲーム」はポケモンカードを中心に、対戦を楽しむための環境を整備したり、グローバルでカードイラストの統一をはかったり、商品設計や販売プロデュースなどを行います。
「アプリ」は『Pokémon UNITE』、『Pokémon Sleep』、『Pokémon GO』などの開発にかかわることが一例です。
「映像のプロデュース」はTVアニメ「ポケットモンスター」、ポケモン初の実写映画「名探偵ピカチュウ」などの制作へのかかわりなどです。
「店舗運営」はオフィシャルショップである「ポケモンセンター」の運営やオンラインショップ「ポケモンセンターオンライン」の展開などを行います。
「ライセンス/タイアップ」は、例えば第一屋製パンとの「ポケモンパン」から、ティファニーなどハイブランドとの製品開発などを行います。それ以外にも、日清ヨーク、昭和西川、花王の製品など様々な企業とタイアップしてポケモンに関連した製品の企画を行います。
株式会社ポケモンの業績推移
同社の業績を決算官報データベースに記載されている情報からみていきます。
5期間分の売上高、当期純利益、当期純利益率は下記のとおりです。
売上高 | 純利益 | 利益率 | |
---|---|---|---|
2025年 | 4,109億3,200万円 | 703億4,300万円 | 17.1% |
2024年 | 2,975億800万円 | 627億100万円 | 21.1% |
2023年 | 2,345億2,800万円 | 488億5,400万円 | 20.8% |
2022年 | 2,042億900万円 | 413億9,200万円 | 20.3% |
2021年 | 1,200億1,900万円 | 186億3,000万円 | 15.5% |
売上高と利益は5期連続で増収増益となっております。
当期純利益率も15%以上で推移しており、20%を超える期もあります。非常に業績が優れております。
2025年2月期は2024年10月にリリースされた『Pokémon Trading Card Game Pocket』(ポケポケ)が業績に及ぼした影響が大きいと考えられます。
ポケポケはDeNAとの共同開発をしたアプリです。DeNA2025年3月期の決算短信には以下の記述があります。
ゲーム事業の売上収益は78,099百万円(前連結会計年度比44.6%増)、セグメント利益は38,577百万円(同1,016.1%増)となりました。2024年10月30日に新規リリースしたタイトル『Pokémon Trading Card Game Pocket』が順調に推移したこと等から、前連結会計年度比で増収増益となりました。
DeNAと株式会社ポケモンがポケポケによりもたらされる収益をどのように分配しているかは開示されておりませんが、ポケポケがヒットすると、株式会社ポケモンの業績も向上します。
現著作者がポケモンの果実を享受
株式会社ポケモンは、幅広い分野での収益源を持っていることが、業績好調の大きな要因となっています。ゲームやカードゲーム、アプリ、映像、店舗運営、ライセンスビジネスなど多様な事業が相互に補完し合い、安定した収益をもたらしています。
かつてはポケモンの人気にコントロールが追い付かずに、利益が現著作者にもたらされないことがありました。
元々,ポケモンの基本になるライセンスは任天堂でハンドリングしていたのですが,2000年頃に世界中でポケモン人気が爆発したときに,コントロールが効かなくなってしまったんです。
世界中で見たこともない商品が溢れかえって,山のように売られているのに,それが一切ポケモンに関係する側の利益につながらない。これではマズいということで,ポケモンに関わる全ての権利を集約してコントロールする場を作ることになったんです。
そのときに調整役に立ったのが岩田さんでした。彼は,米国任天堂,任天堂,クリーチャーズ,ゲームフリーク,さらにはテレビ東京やJR東日本企画,そして小学館なども含めて,全て交通整理をされて図面を描いて,今の会社の母体となる「ポケモンセンター株式会社」から「株式会社ポケモン」への道を作ったんです。

ポケモンが長年愛されるコンテンツとなっているのは、早い段階から版権の管理を現著作者が行えたことにあると考えられます。
特に、デジタル領域の成長は著しく、スマートフォン向けアプリ『Pokémon GO』や新作の『Pokémon Trading Card Game Pocket』といったタイトルなど多数のアプリがヒットしています。ダウンロード数やアプリ内の課金が伸びると、株式会社ポケモンにも利益がもたらされる構造になっていると考えられます。
また、リアルな接点を持つ「ポケモンセンター」や各種ライセンス製品の販売によって、ファンのブランドロイヤルティを高め、ポケモンブランドの価値をさらに押し上げています。企業とのコラボレーション商品も多数展開されており、多角的な収益モデルが確立されています。
こうした多方面からの収益構造により、株式会社ポケモンは一過性のヒットに依存しない、安定した経営基盤を築いています。
(参考)決算公告とは
会社法上、すべての株式会社は決算公告が義務付けられております。
会社法第440条第1項では、「株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告しなければならない」と定められています。資本金5億円以上又は負債総額200億円以上の大会社にあっては、貸借対照表に加えて損益計算書も公告します。
公告の方法として、第939条第1項に以下の3つが規定されております。
- 官報に掲載する方法
- 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
- 電子公告
これらの方法を通じて、株式会社の決算を誰でも自由にみられるようにすることが会社法で求められております。
一方、多くの株式会社は決算公告を行っておりません。東京商工リサーチの2022年の調査によると、決算公告をしている株式会社は1.8%にすぎません。
情報開示が求められる時代だが、株式会社で官報での公告を記載しながら、実際に決算公告しているのは1.8%にすぎない。会社法の規定で、有価証券報告書の提出会社以外のすべての株式会社は「決算公告」が義務付けられている。公告を怠ったり、不正公告をすると罰則もある。商業登記簿で公告方法を官報としている株式会社は、株式会社全体の約8割(推計217万9,325社)に達する。だが、そのうち2022年の官報で決算公告したのは4万214社、1.8%(2021年1.8%)にとどまり、情報開示に消極的な姿勢が変わっていないことが東京商工リサーチ(TSR)の調査でわかった。
法律違反ではありますが、罰則が科されにくいということが決算公告を行わない要因のようです。
決算公告以外で財務諸表が見られるのは金融商品取引場で開示が義務付けられている有価証券報告書です。上場企業や大会社は有価証券報告書の開示を行います。
例えばゲーム会社の中でも任天堂株式会社や株式会社バンダイナムコホールディングスは上場しているので、有価証券報告書を作成します。
一方、株式会社ポケモンは未上場なので、有価証券報告書を作成しません。決算公告で業績を知ることができますが、情報量は有価証券報告書に比べて限られてしまいます。
参考


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