住友不動産株式会社(以下住友不動産)は安定した業績を出し続ける企業です。同社の事業を確認して、その理由に迫ります。
結論
- 住友不動産は、安定収益であるビル賃貸料を収益の要にしています。一等地に多くの自社ビルを保有しており、物件のテナントから賃料を得るビジネスを行っており、安定して収益を生み出しています。
- 不動産賃貸事業以外の収益性も高く、すべてのセグメントで利益率が10%を上回っております(2024年3月期)。
- キャッシュの裏付けが高い利益を獲得しているため、利益の質も高く評価できます。
- 11期連続の増配をしております。今後も増配のペースを上げる計画です。
住友不動産の事業
住友不動産は不動産賃貸事業、不動産販売事業、完成工事事業、不動産流通事業、およびその他の事業を営んでおります。これら5つの事業がセグメント情報の単位となります。
(1) 不動産賃貸事業
主としてオフィスビルならびに高級賃貸マンション等の開発・賃貸事業を行います(ビル事業本部および都市開発事業本部が担当)。
そのほかに、住友不動産ヴィラフォンテーヌ㈱がホテル事業を、住友不動産ベルサール㈱がイベントホール・会議室等の賃貸事業を、住友不動産商業マネジメント㈱が商業施設等の運営・管理を行っております。
(2) 不動産販売事業
マンション、戸建住宅、宅地等の開発分譲事業を行います(住宅分譲事業本部および用地開発事業本部が担当)。
マンション分譲後の管理業務については、住宅分譲事業本部および住友不動産建物サービス㈱が行います。
(3) 完成工事事業
主として建替えの新システムである新築そっくりさんならびに戸建住宅等の建築工事請負事業を行います(新築そっくりさん事業本部および注文住宅事業本部が担当)。
また、住友不動産シスコン㈱がインテリアの販売等を行います。
(4) 不動産流通事業
住友不動産販売㈱が、不動産売買の仲介、住宅等の販売代理および賃貸仲介を行います。
(5) その他の事業
住友不動産エスフォルタ㈱がフィットネスクラブ事業を、泉レストラン㈱が飲食業を、いずみ保険サービス㈱が保険代理店業を行います。
セグメント別業績
2023年度のセグメント別業績を確認します。金額の単位は百万円です。
売上高 | 利益 | 利益率 | |
---|---|---|---|
不動産賃貸 | 444,406 | 176,580 | 39.7% |
不動産販売 | 241,207 | 60,208 | 30.0% |
完成工事 | 205,058 | 20,841 | 10.2% |
不動産流通 | 72,308 | 18,739 | 25.9% |
その他 | 11,277 | 1,418 | 12.6% |
注目すべきは不動産賃貸が最大の売上高と利益を誇るにも関わらず、利益率も最大である点です。
同社は東京都港区に32棟、新宿区に16棟、そして千代田区に7棟の賃貸事業用建物を保有しております。
所有するビル群から安定した収益を得ることができます。さらに、賃料収入はキャッシュで得ることができます。利益にキャッシュの裏付けがあるため、新規の投資や配当などを行いやすいというメリットもあります。
次に利益額と利益率がともに高い事業が不動産販売です。主にマンション・戸建住宅の分譲から得られる利益です。新築物件には企業の利益が3割ほど上乗せされるといいますが、ちょうど30%の利益率となっております。
不動産流通も25.9%の利益率を獲得しており、収益性が高い事業です。主に不動産等売買の仲介から得られる利益であります。
同社のセグメントはすべて利益率が10%を超えており、収益性の高いポートフォリオを多数抱えていることがわかります。
キャッシュの裏付けの高い利益
賃貸事業が中心である特徴上、同社の営業利益は営業活動によるキャッシュ・フローと近い値であり、利益の質が高いと評価できます。
直近5期間分の営業利益と営業活動によるキャッシュ・フローをまとめました。金額の単位は百万円です。
営業利益 | 営業CF | |
---|---|---|
2020年3月期 | 234,332 | 230,458 |
2021年3月期 | 219,244 | 225,947 |
2022年3月期 | 233,882 | 192,967 |
2023年3月期 | 241,274 | 165,112 |
2024年3月期 | 245,666 | 232,033 |
2022年と2023年を除き、おおむね利益とキャッシュが近いことがわかります。
増配を続ける
同社は2014年から11期連続の増配を行っております。
決算期 | 1株当たり配当額 |
---|---|
2014年3月 | 20円 |
2015年3月 | 21円 |
2016年3月 | 22円 |
2017年3月 | 24円 |
2018年3月 | 27円 |
2019年3月 | 30円 |
2020年3月 | 35円 |
2021年3月 | 40円 |
2022年3月 | 45円 |
2023年3月 | 52円 |
2024年3月 | 60円 |
毎年の1株当たり配当金の増加幅も拡大していることがわかります。
2014年から2016年までは1円づつ、2016年から2017年は2円、2018年から2019年は3円増加しています。
2019年から2022年までは5円づつ増加しており、2022年から2023年は7円、2023年から2024年は8円です。
同社の計画によると、今後も配当金の増配ペースを一株当たり7円から10円に引き上げ、2028年3期には100円配を目指しております。
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