TOPPANホールディングス㈱:株価の上昇要因

事例

TOPPANホールディングス株式会社(以下TOPPANHD)は印刷業界の最大手企業です。印刷業界はTOPPANHDと大日本印刷が国内市場の7割以上を占めております。

印刷業界は紙媒体の需要減少により、市場の拡大は期待できませんが、同社の株価は上昇傾向にあります。株価上昇要因を明らかにします

結論

  • TOPPANHDは情報コミュニケーション事業、生活・産業事業分野、エレクトロニクス事業分野の3つのセグメントで事業を行っています。
  • 安定的に稼ぐことができる情報コミュニケーション事業分野および生活・産業事業分野を抱えており、かつ成長分野のエレクトロニクス事業分野を有していることが株価の上昇要因であると考えられます。
  • エレクトロニクス事業分野の売上高と利益は増収増益傾向であり、成長しております。利益率も高いです。
  • 2022年度と2023年度のエレクトロニクス事業分野は売上高が一番小さい一方で、営業利益は一番大きくなっており、同社の業績に及ぼす影響も大きくなっております。

TOPPANHDの株価の推移

TOPPANHDの5年間の株価推移は以下の通りです。

2020年5月29日の終値が1,843円に対して、2025年5月27日には3,867円となっています。5年間で2,024円株価を上げています。

TOPPANHDの事業領域

TOPPANHDは2015年度以降、情報コミュニケーション事業、生活・産業事業分野、エレクトロニクス事業分野の3つのセグメントで事業を行っています。

同社の第178期の有価証券報告書を用いて事業領域の詳細を確認します。

情報コミュニケーション事業分野は、デジタルビジネス関連、BPO関連、セキュアメディア関連、コミュニケーションメディア関連に区分されています。

区分ごとの主要製品は数多くありますので、一部だけを示すと電子書籍、バックオフィス代行業務、証券類全般、書籍・雑誌・教科書・カタログなどの製造販売を行います。

生活・産業事業分野は、パッケージ関連、建装材関連、その他(インキ製造など)に区分されています。

製品の例として軟包材、紙器、プラスチック成型品、化粧シート、床材、化粧板などの製造販売を行います。

エレクトロニクス事業分野は、ディスプレイ関連と半導体関連に区分されています。

ディスプレイ関連の製品はディスプレイ用カラーフィルタ、反射防止フィルム、中小型TFT液晶パネル、調光フィルムなどの製造販売を行います。

半導体関連の製品はフォトマスクやFC-BGA基板などの製造販売を行います。

フォトマスク半導体の製造過程で必要となりますが、TOPPANHDがトップシェアを誇っています。

凸版印刷、半導体原版メーカーを会社分割により設立
米国、欧州、アジアに製造拠点を持つ「株式会社トッパンフォトマスク」始動インテグラルが資本参加、独立企業体として更なる成長と競争力の強化を実現し、半導体産業の継続的サポートを目指す

事業分野別

2023年度(2023年4月1日から2024年3月31日)における事業分野別売上高は情報コミュニケーションが52.6%、生産・産業が31.5%、エレクトロニクスが15.9%です。

出典:TOPPANホールディングス㈱サステナビリティレポートレポート2024、160ページ

事業構成で売上高が最も大きいのが情報コミュニケーション事業分野です。次に生活・産業事業分野で最後にエレクトロニクス事業分野となります。

各事業分野の業績推移を次に確認します。

セグメント業績

7年分のセグメント業績をまとめました。金額の単位は百万円です。

最初に、情報コミュニケーション事業分野です。

売上高営業利益利益率
2017年度932,47947,6925.1%
2018年度875,12143,6795.0%
2019年度908,01856,3066.2%
2020年度878,16951,1175.8%
2021年度903,50451,2315.7%
2022年度887,50742,8834.8%
2023年度900,00945,6965.1%

情報コミュニケーション事業分野の業績は安定という言葉にまとめられます。売上高は約8,700億円から9,300億円の間に収まります。営業利益率も5%台前後を行ったり来たりしている傾向です。

このセグメントは日本印刷と市場を分かつ寡占市場です。毎期安定して印刷業界の需要を満たしているため、変化が少ないのだと思います。

原材料費の高騰などコストが変動することもありますが、寡占市場であるため、価格への転嫁もしやすく、したがって利益率が安定していると考えられます。

次に、生活・産業事業分野です。

売上高営業利益利益率
2017年度419,59611,0042.6%
2018年度414,61918,7164.5%
2019年度420,47828,9556.9%
2020年度425,94527,6876.5%
2021年度444,22628,5246.4%
2022年度520,69923,5074.5%
2023年度537,44527,4215.1%

生活・産業事業分野の業績は変動という言葉にまとめられます。営業利益率を見ますと、一番小さい2017年度の2.6%から2019年度の6.9%まで4%ほど上下しております。

最後に、エレクトロニクス事業分野です。

売上高営業利益利益率
2017年度203,5736,3553.1%
2018年度195,32513,8617.1%
2019年度178,14312,1716.8%
2020年度183,73211,9666.5%
2021年度221,51030,01613.6%
2022年度255,38548,20818.9%
2023年度266,55949,58618.6%

エレクトロニクス事業分野の業績は成長という言葉にまとめられます。売上高、営業利益ともに右肩上がりの傾向があります。

利益率も2021年度以降は10%以上を超えており、直近は18.6%にまで収益性が高まっております

まとめ

TOPPANHDは、情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクスの3つの事業分野を中心に多様な製品・サービスを展開しています。売上高の構成比では情報コミュニケーション分野が過半数を占め、安定した業績が特徴です。生活・産業分野は利益率の変動が見られ、競争の影響を受けやすいと考えられます。一方、エレクトロニクス分野は売上・利益ともに堅調に成長を続けており、特に高い収益性が注目されています。全体として、TOPPANHDは安定性と成長性を併せ持つバランスの取れた事業構造を築いています。

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